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とーらぶ@霊感レベルS

タイトルからお察しの通りに御座います。
霊感=霊力とした場合、レベルS主人公が審神者になったら無敵じゃね?という単純な思考から生まれた派生のネタ。
取り敢えず浮かんだところまで投げ込む。
彼らの並び順は公式の紹介ページ下部にある順を参考にしてます。私の趣味じゃないですよ。でも一振り目には彼を選びました。見た目も性格も声も、彼を構成する何もかもがドツボだったんですわ……。

本文の内容には影響ないけど、一応本編から約5年後設定。
間もなく大人になる彼女の身に降り掛かった、起こってはいけない出来事の話。




 ただただ、真っ白な空間だった。
 眩いほどの色に覆われた視界は視覚からの認識を狂わせる。だからここがどのくらいの広さがある部屋なのか、そもそも壁や天井のある場所なのか、そんな判断すらつけられない。ただ一つ、座り込んだ足許の固さに地面があることだけは認識できた。
 光りがなくとも視界を焼くこの場所には自分と、こんな場所では汚れにも見える黒ずくめのスーツを着た、声から察するに恐らくは男。そして視覚には捉えられない台座に並べられた五口の刀。
 この状況が何を意味するのか、彼女には嫌と言うほど理解できた。理解できてしまえた。

 ――― 自分が人とは違うことを、彼女は生まれるよりずっと以前から理解していた。
 誰に教えられたわけではない。ただ“そういうもの”なのだと、人の形が出来るよりも前から、彼女は知っていた。

 だから彼女は、自分という存在の結末もまた知っていた。人ではあるがひとではない自分は、人としての結末も、ひととしての結末もまた、迎えることはない、と。受け入れていた。抗う術はなく、そもそも、抗う理由がなかった。
 何故なら“そういうもの”だからだ。世界は在るがままに進み、流れる。――― だが、その必定を覆すことが起こってしまった。起こされた。

「……、な……」

 原因の一因たる男が語る内容は彼女の神経を逆撫でした。
 けれど気付かぬ男は尚も語り、求める。助けて欲しいと。手を貸して欲しいと。我々がいなければ失われていたその命を、その存在を、この世界を守るために。
 それは懇願に似せた要求であり、脅迫に等しかった。彼女ではなく、普通の人間が相手であれば。

「――― 巫山戯るな!!!」

 瞬間、感情が爆発した。その性質から感情の起伏に乏しい彼女が珍しく見せた、明確な怒りだった。
 それは波紋のように広がり、形となる。真っ白の空間に閃光が走り、更に視界を焼く。そして聞こえた鈴の音に彼女は息を呑む。景色を取り戻した視界には、それまでなかったいくつもの色が存在していた。

「俺は山姥切国広。それで、あんたの敵はどこにいる」

 その一つ、彼女から最も近い場所にいた存在が口を開く。薄汚れた襤褸布を頭から被り姿を隠していたが、地面に座り込み見上げる彼女にはその顔がよく見えた。金色の髪に深い翡翠の瞳を長めの前髪で隠した、綺麗な顔立ちの青年だった。
 これが一体どういう事態なのか、やはり彼女には嫌と言うほど理解できた。理解できてしまえた。その途端、今し方の怒りが急激に形を潜め、次いで彼女を襲ったのは深い絶望だった。愕然として言葉を失い、青年の問いに何も答えることができない。
 けれど、青年はこちらの答を待ってはいなかった。
 くるりと身を翻すと腰を落とし、左手に握っている刀の鯉口を斬る。その行動を彼女が理解するのと、青年が地を蹴るのはほぼ同時だった。人には到底体現できぬ速さで、青年は黒づくめの男へと肉薄する。

「止まって!!」

 その刃が男を斬り付ける寸前で、彼女は叫んだ。
 するとピタリ、刀を振るう腕が不自然な急停止をした。そのことに、彼女の顔はまたも絶望に染まる。

 そんな一瞬の隙を衝くように、黒ずくめの男が何事か慌ただしく動作すると、突如景色が変わった。白一色だった天井は迫る夕闇に染まり、座り込んでいた地面は土色に。そこは見事な日本家屋が有する広い庭先へと姿を変えていた。
 耳慣れない声の、驚きを示す声が聞こえた。彼女は憎らしいまでに晴れ渡る空を茫然と見上げ、込み上げた感情に蓋をするように顔を覆い、蹲る。抑え切れなかった感情が一筋だけ、零れた。


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