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傍観者を望む 番外

メルマガ登録者限定配信のつもりで執筆してたけど、着地点が見つからずに挫折したブツを発掘。
故にブチッと唐突に終わってる。
18話 副部長は見た!?直後の話。






(財前と主人公+金太郎/財前視点)


「おい、本当に大丈夫か?」

 唐突に気付いてもうた感情に俺が頭抱えとる間に、金太郎の相手を済ませたんか、あの人が俺に気遣わしげに声を掛けて来た。
 膝に肘ついて下向いとる俺の顔を覗き込もうとしとんのか、声が、気配が近い。
 視線だけ動かした視界の端をまた、あの人の黒髪が掠める。同時にやっぱりまた、何や甘い匂いがした。そこら辺のキンキン喧しい女共がつけとる鼻が曲がりそうなくっさい香水とはちゃう、仄かに香る程度のもんや。

 それがあの人からするもんなんは確かやった。男らしい言動から想像できひん、意外な女らしさや。
 さっき見た耳に髪掛ける仕種も、妙に色っぽ、く、て……。

「――― ッ!!?」
「お、おい? 大丈夫か?」
「な、んで、も、あらへんっ」
「どこがだ。とても何でもないようには見えんぞ」

 いらんことしよる頭抱える俺に説得力がないんはわかっとる。
 せやけど、さっきとは比べもんにならへんくらい熱なっとる自覚がある顔を、上げられる訳があらへんやろ……!

「……具合が悪いのなら、無理をせずに帰った方がいい」

 そう言った気配が更に近なって、背中に多分、あの人の手が添える程度に触れたんを感じた。
 その瞬間、今度は身体まで熱なった。平均体温の低い俺には信じられへん、病気して熱出した時ぐらいにしか体験せぇへん熱さや。
 おまけに石かっちゅうくらいガチガチに身体が強張ってもうて、普段他人にこない近付かれたら身ぃ退く距離のはずやのに、今は身体どころか指一本動かれへん。

「この雨だ、自宅に連絡して親御さんに迎えに来てもら ―――」
「できたあああっ! できたで姉ちゃん!! ほらほら、はよ見てぇや!!」

 せやけど、救いっちゅうんは意外と身近にあるもんやった。

 金太郎がいきなし大声で騒ぎ出した次の瞬間、近くにあった気配も背中に添えられとった熱も離れて、すぐ脇で何や派手な音が上がる。
 反射的にそっち見たら、尻餅ついとるあの人の膝の上に、金太郎が乗っとった。
 多分、金太郎的には抱き付いただけのつもりが勢い余って押し倒してしもたんやろ。いつもやったら、少し考えたら気付きそうなもんやのに、こん時の俺はただ呆けることしかできひんかった。

「なあなあ姉ちゃん見てや! ワイ、自分の力で問題解けたで!」
「わ、わかったから落ち着け、金太郎。それと図書室では静かに。そんなに大きな声を出さなくとも聞こえるし、焦らなくともわたしは逃げないよ」
「あ……、す、すまへん……」
「これから気を付ければいいさ。どれ、見せてごらん。答え合わせしよう」

 金太郎を膝に乗せたまんま、あの人は金太郎が突き出したノートに目を落とした。
 しばらくして顔を上げたあの人は、前に俺に見せたんとはちゃう満面の笑みを浮かべて、金太郎の頭を撫でた。金太郎も同じように笑って、あの人に抱き付く。

 ――― 無意識、やった。

「っだあああああっ!!! な、何すんのや光!?」
「……え? あ、ああ、すまん金太郎。いや、ちゅうか自分こそ何しとんねん。はよその人から離れぇや」

 頭抱えてギャーギャー騒ぐ金太郎と左手の痛みで、自分が何をしたんかは察しが付くけど、無意識とかどないやねん。
 ちゅうか自分、コレやばいやろ。これこそどないすんねん……。

 せやけど、いつの間にかカウンターの前に立っとった白石部長の、不思議と恐怖しか感じられへん笑みと包帯解き出した左手に絶叫して、金太郎がまたあの人に抱き付いたんを見たら、俺の身体はまた無意識に動いとった。
 その所為で金太郎がますます騒いで、俺と部長はあの人に叱られて、金太郎はあの人に抱き返されて……。

 あかん、意識せな手が出てまうわ。

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