その神様は人間嫌い。
原因は他者のいのちを犠牲に、自らの欲望を叶えようとしたトリップ主たちの強欲さと傲慢さです。
別に他者のいのちを犠牲にすること自体は、食物連鎖のように人間以外のいのちも行っていることだから構いません。しかしトリップ主たちが行いは自身の欲望を満たすためだけのもの。食物連鎖のような、生きるために必要な犠牲ではありません。
しかも犠牲になったいのちを憐れんで手を差し伸べれば、返って来るのは同じく強欲で傲慢な欲望に満ちた願いでした。
人間嫌いの神様はしかしそれでも、自らが生み出したいのちを完全に見捨てることができず、他者の犠牲になり他者を犠牲にする連鎖は止まることがありません。
そんな犠牲の一人だった主人公が望んだのは唯一つ、生きること。
しかし元の世界の主人公は既に死亡しているため同じ生を生きることはできず、また願いを叶えるには犠牲が必要です。
すると、主人公が差し出したのは“今の自分”でした。それは主人公がその世界に存在したという事実自体を抹消することを意味しています。
驚く神様の反応に、主人公は自分の存在を殺してまで生に執着する己の浅ましさを嗤いました。
けれど神様からすれば、それこそが正しい連鎖の形です。
だって主人公は、自分が“生きるため”に今の自分を殺すのですから。
こうして連鎖は断たれ、主人公は無事に転生を果たしました。
しかしそれはただの転生ではなく、転生トリップでした。
幾度となく強欲で傲慢なトリップ主たちをトリップさせて来た神様のうっかりミスです。そこは多くのトリップ主たちが行き先として願った世界でした。
が、元の自分を犠牲に赤ん坊から再スタートしている主人公に前世の記憶などはないため、主人公自身にはトリップした自覚も転生した自覚もありません。
また連鎖を断ち切ってくれた主人公への感謝の気持ちとして、主人公には神様の強い加護が与えられ、幸福な第二の人生を送るのでした。
と、ここまでが前振り。(長いな!)
本編はここから始まります。
端的に言えば、強欲で傲慢なトリップ主たちの欲望よりも、神様の好意からくる主人公への加護のが強力だよって話。
だって主人公の人生が幸福に満ちることは加護により約束されているのです。しかし幸福とは一人で成り立つものではなく、与え与えられるもの。
つまり主人公に関わる人々もまた、幸福であることが約束されているのです。
それを侵害する存在=トリップ主たちは排除されて然るべきなのです。
こうして主人公は愛する人(=キャラ)と結ばれ、幸福な人生を歩み、無事に天寿を全うしたのでした。
これトリップ主たちが超空気かも…。