私には3つ年下の妹がいた。
ヒトとして在り得ない、生まれながらに桃色の髪と金色の瞳を持った妹が。
けれど言い回しから察してもらえる通り、その妹は現在我が家に存在していない。
今はどうか知らないし知りたくもないけど、別に死んだ訳じゃない。単に生まれてすぐそういう施設へ送られて、我が家の一員として数えられることなく存在を抹消されただけの話だ。
あ、でもそう考えると、ある意味では死んだのと同義なのかもしれないね。
なんて私の言い様や妹への扱いを、或いは非情と思う人がいるかもしれない。
だけど考えてもみて欲しい。
十月十日を慈しみ、鼻の穴からすいかを出すような痛みと表現される激痛を耐えて妹を産んだ母は、先述した正に異色である妹の姿に戦慄して、“それ”が自分の腹から生まれた事実に心を病んだ。
第二子の誕生を心待ちにしていた父も似たようなもので、妹がアレなら私も同じかもしれないと疑心暗鬼に陥り、間もなく自らこの世に別れを告げた。
つまり妹の誕生で、一瞬にして、私たち家族は崩壊したのだ。
これでどうして非情にならずにいられようか。いられる訳がない。
――― 妹の存在を、憎く思わないはずがない。
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主人公はテニプリの世界でごく普通に生を受けた子。
しかし妹の存在に人生を狂わされ、精神まで狂わせた狂人。自分がイカレた人間であることを自覚し、けれど周囲には決して悟らせない。善人面した偽善者。
幼馴染の立場にキャラがおり、彼だけが唯一主人公の本性を知っている。
一方の妹はお察しの通り、テニプリ知識を持った特典付きの転生トリップ者。
自分が好きなキャラの幼馴染ポジションを狙って転生を選択し、その立場にあった主人公の家庭に『本来なら生まれるはずがない存在』として生を受け、顔立ちだけではなく髪と瞳の色にまで上記の注文を付けたために気味悪がられて捨てられる。結果、夢叶わず。
この展開に特典を得た自分は神様に選ばれた愛され主だと思い込んでいた妹もまた狂い、しかもこちらは無自覚。
因みに特典は3つまでで『転生・容姿・頭脳』を選択。愛され主だと思い込んでいたため、『逆ハー』は望まなかった。
年齢は妹が自分の好きなキャラと同学年で、主人公は高校生。
妹はその後、狂った上に元来の諦めの悪さと都合のいい思考回路で「これは神様が与えた試練なんだわ!」と解釈。
特典の頭脳で好きなキャラがいる学校に首席合格し、集まる視線の種類も意味も誤解して「嗚呼、やっぱり! すべてはこの時のためへの布石だったのね!」有頂天になる。
一方で髪と瞳の色で妹の存在に気が付き、妹のお目当てである幼馴染のキャラを利用して、妹を更なる狂気へ貶める主人公。
復讐であって復讐ではなく、終わりなどなければ終わらせる気もない。
そんな狂人たちの話。
因みに幼馴染は各校の部長が妥当かな。但し氷帝の場合は出身やらを考慮し、跡部・忍足・滝・樺地は除外。
私のイメージでは幸村が一番ぴったり。内容的に嬉しくないだろうけど。